ケンショウ学級
監獄生活4日目。
「全員起床!!すぐに集まれ」
佐野くんの号令で僕らは目覚め、各独房の担当になった看守達が手際よく独房の扉を開けていく。
「昨日はあんまり眠れなかったな」
春馬が小さくそう言った。
「そうだ、金子くんは?」
夜の九時前から朝の六時の間9時間もの間閉じ込められた金子くんがどうなったのか。叫び声がいつ聞こえなくなったのかは分からないけど、今は聞こえていない。
「連れていったのはアキラだったからな、アキラが今確認しに行っているよ」
春馬も眠れなかったのだろうクマが出来ていた。金子くんは叫び疲れてどこかで眠ったんだろう。そう信じたかった。
「ザザッ……」
その放送は急なものだった。
「皆さんおはようございます。監獄生活四日目になりました。ここでお知らせです」
四日ぶりに聞くアイツの変声機の声。最悪の状況が脳裏をよぎった。きっと、僕と同じように想像力が働いた人がいたと思う。それがどれだけの人数だったのかは分からないけれど。
「金子くんの死亡を確認しました、引き続きロールプレイを継続してください」
アイツは当たり前の挨拶を交わすかのように、死亡を告げて、プツッと無機質な音を僕らの鼓膜に響かせていった。
「アキラ!おい、金子はどうなってるんだよ!?」
佐野くんが懲罰房へと駆け出したのと同時に、看守達が一斉に駆け出した。僕ら囚人だって悠長に整列している場合ではない。
そこで見たのは、まるでゴミの山を見つめるかの様なアキラの姿と、首元を掻きむしったのだろう金子くんの変わり果てた姿だった。
「うっ、おえぇえっ」
惨たらしい惨状を見て吐き出す人が何人もいた。食堂に吐瀉物の匂いが充満していく。
「……ひっ、いやぁあぁぁ!」
これまでに十数人がこのケンショウ学級でアイツに殺された。でも、ここまでリアルな死体を見るのは誰もが初めてだった。
時間が経った血は茶色く濁り、うつ伏せで血溜まりに溺れる金子くんの両手も自分自身の血で真っ赤に染めあがっている。掻きむしった首は深くえぐれていて、爪はボロボロに欠けて両手の爪の何ヶ所かは折れて剥がれていた。
「……苦しかったな金子。おやすみ」
春馬がそう言って、開いていた金子くんの瞼を閉じさせた。
「春馬……」
泣き叫ぶ声、食堂から逃げ出す人、壁際でへたりこんで震える人。色んな反応の中で暗い瞳で佇むアキラと、死体を前に動じない春馬の姿が妙に違和感を感じた。
首の動脈を切るには、一般に想像しているよりも深く傷を付ける必要があると、聞いたことがある。逃げ出したくて辛くて、怖くて、必死で叫んで壁を引っ掻いて、自分の首を何度も何度も何度も何度も……痛かったよね、命を絶つことが怖くないわけない。だけど、それよりも辛い恐怖の中で彼は自分の手で人生に幕を閉じたんだ。
「人殺し……」
ぽつりと誰かが呟いた。誰のことかなんて皆が分かってた。もちろんその本人も。
「はぁ?勝手に死んだの金子だろ?
誰だよ?あぁ?今オレのこと人殺しとか言ったやつ誰だよぉ!?」
睨みつけながら恫喝するアキラ。それに1番に反応したのは以外な人だった。
「ふざけるなぁ!!」
委員長が止める間もなく飛び出して、アキラの右頬を思い切り殴った。その弾みでアキラが壁にまで吹き飛ぶ。
「全員起床!!すぐに集まれ」
佐野くんの号令で僕らは目覚め、各独房の担当になった看守達が手際よく独房の扉を開けていく。
「昨日はあんまり眠れなかったな」
春馬が小さくそう言った。
「そうだ、金子くんは?」
夜の九時前から朝の六時の間9時間もの間閉じ込められた金子くんがどうなったのか。叫び声がいつ聞こえなくなったのかは分からないけど、今は聞こえていない。
「連れていったのはアキラだったからな、アキラが今確認しに行っているよ」
春馬も眠れなかったのだろうクマが出来ていた。金子くんは叫び疲れてどこかで眠ったんだろう。そう信じたかった。
「ザザッ……」
その放送は急なものだった。
「皆さんおはようございます。監獄生活四日目になりました。ここでお知らせです」
四日ぶりに聞くアイツの変声機の声。最悪の状況が脳裏をよぎった。きっと、僕と同じように想像力が働いた人がいたと思う。それがどれだけの人数だったのかは分からないけれど。
「金子くんの死亡を確認しました、引き続きロールプレイを継続してください」
アイツは当たり前の挨拶を交わすかのように、死亡を告げて、プツッと無機質な音を僕らの鼓膜に響かせていった。
「アキラ!おい、金子はどうなってるんだよ!?」
佐野くんが懲罰房へと駆け出したのと同時に、看守達が一斉に駆け出した。僕ら囚人だって悠長に整列している場合ではない。
そこで見たのは、まるでゴミの山を見つめるかの様なアキラの姿と、首元を掻きむしったのだろう金子くんの変わり果てた姿だった。
「うっ、おえぇえっ」
惨たらしい惨状を見て吐き出す人が何人もいた。食堂に吐瀉物の匂いが充満していく。
「……ひっ、いやぁあぁぁ!」
これまでに十数人がこのケンショウ学級でアイツに殺された。でも、ここまでリアルな死体を見るのは誰もが初めてだった。
時間が経った血は茶色く濁り、うつ伏せで血溜まりに溺れる金子くんの両手も自分自身の血で真っ赤に染めあがっている。掻きむしった首は深くえぐれていて、爪はボロボロに欠けて両手の爪の何ヶ所かは折れて剥がれていた。
「……苦しかったな金子。おやすみ」
春馬がそう言って、開いていた金子くんの瞼を閉じさせた。
「春馬……」
泣き叫ぶ声、食堂から逃げ出す人、壁際でへたりこんで震える人。色んな反応の中で暗い瞳で佇むアキラと、死体を前に動じない春馬の姿が妙に違和感を感じた。
首の動脈を切るには、一般に想像しているよりも深く傷を付ける必要があると、聞いたことがある。逃げ出したくて辛くて、怖くて、必死で叫んで壁を引っ掻いて、自分の首を何度も何度も何度も何度も……痛かったよね、命を絶つことが怖くないわけない。だけど、それよりも辛い恐怖の中で彼は自分の手で人生に幕を閉じたんだ。
「人殺し……」
ぽつりと誰かが呟いた。誰のことかなんて皆が分かってた。もちろんその本人も。
「はぁ?勝手に死んだの金子だろ?
誰だよ?あぁ?今オレのこと人殺しとか言ったやつ誰だよぉ!?」
睨みつけながら恫喝するアキラ。それに1番に反応したのは以外な人だった。
「ふざけるなぁ!!」
委員長が止める間もなく飛び出して、アキラの右頬を思い切り殴った。その弾みでアキラが壁にまで吹き飛ぶ。