ケンショウ学級
アキラの暴走は許容しがたいものだったし、きっといつかは正義感を持った人が誰かしら、何かしらの形で粛清しただろう。

だけど、まさか温和な委員長が友達を殴り飛ばすなんて想像もできなかった。

「お前は人の命をなんだと思ってるんだ!」

委員長は倒れたアキラに馬乗りになって、両手で殴り続けていた。アキラの顔が赤く腫れていく。

こんな形で委員長が止めに入るなんて、こんな暴力でもって訴えるなんて思わなかった……暴力!?

僕はすぐにでも止めようとした。恐らくもう間に合わない。でも、止めなければいけなかった。

「委員長ダメだ!!」

「07番、友澤くん。『暴力を禁ずる』というルールを破ったので罰を与えます」

「……えっ?なんで僕が罰を?」

アイツの声が食堂に響いて、僕は全身の血の気が引いた。委員長の顔もどんどん青ざめていった。

アキラは委員長が動揺している隙を見て、抜け出し口からの出血を袖で拭いた。

「僕は間違ってないじゃないか!人としてあるべき姿それに反したのは里見くんでしょう!?」

スピーカーに向かって叫ぶ委員長。初めて泣いている姿を見た。初めてこんなにも取り乱す姿を見た。こんなに弱々しい姿で終わるのか?

「はぁ?ルール破ったか破ってないかの話だろ、バカが」

アキラはそう言い捨てて委員長をいちべつした。

「うわぁぁああっ!ぐぃやぁああああっ!!」

その瞬間、僕らの前で委員長は電気ショックを受けて弾け回る。金子くんの血溜まりをビシャビシャと飛び散らしながら、断末魔はふとした瞬間に消えて、人肉の焼けた悪臭を放ちながら黒炭となった委員長だったものが、血溜まりに沈んだ。

「もう嫌、私もうこんなの耐えられない……もうこんな所から出してください!もう終わりにしてぇ!」

震えていた見根津さんが天井に向かって叫んでいた。それは、実験が始まる前にアイツが僕達に確認したことへの答えたったのだ。

「見根津さん、この監獄実験から抜け出すのですね。では、人生と言うロールプレイからも解放いたしましょう」

後ろから光が点滅して、か細い断末魔が響いた。電気ショックで全身が歪な屈伸を繰り返しながら、床の上でビクビクと弾ける。

3人も……こんな簡単に3人もの命が終わって良いのか。そんなわけない、そんなわけないのに。

「うっ……くそっ、どうして」

僕は自分の不甲斐なさから涙を流し、どうしようもないこの状況への、やり場のない怒りで震えるしかなかった。
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