ケンショウ学級

食堂に入ると佐野くんだけでなく数人がそこに座っていた。消灯までまだ1時間近くある。一体なんだろうこのメンバーは?

「06番、まぁ座れ」

そう言って佐野くんが自分の前の席に僕を誘導した。集まっていたのは、佐野くん、田口くん、春馬、それに原田さんだった。

「みんな集まってもらって悪いな。こんな場所でまともなままでいるのはこのメンバーだと思って集まってもらった。これから先もこの時間に、基本的に今いるメンバーで集まりたいと思っている」

「……基本的に?」

春馬がそう聞いて、佐野くんは集まった一人一人と目を合わせて、その問いに答える。

「ああ。もしこの先、様子がおかしいと思ったら話し合いには呼ぶことはできなくなる。だから基本的に……だ」

なるほど、確かに納得がいく。こんな環境下だ、いつ誰が豹変してしまってもおかしくはない。

「よし、じゃあ本題に入ろう。率直な意見を聞きたいんだけど、アイツは誰だと思う?」

田口くんが切り出して、皆は真剣な表情になった。だからこのメンバーか。

「私は……アイツがこの教室にいるとはどうしても思えない。白仮面についてもこの前みんなに左肩を見せてもらったからこの中には居ないと思う。そう信じたいって気持ちが大きいのかもしれないけど」

原田さんの答えは誰しもが考えている所だろう。

「でも、そうなると06番が持っていた本に書いてあったことと矛盾が出てきてしまう」

そう、僕が大上先生に貸してもらったあの本に書かれていた「犯人はこの教室にいる」というメッセージに反する。

「それについてなんだけど、あの本かなり古いというか使い古されていたよな。考えたくない、こんな想像したくないんだけど……あのメッセージはオレ達より前にケンショウ学級に参加させらされた人に向けたメッセージってことはないのかな?」

「確かに。今回の実験の為に作られた環境にしては手が込みすぎているよね。30人弱の中学生を監禁できる施設に、一月もの間生活ができること、きっと僕達の家族は捜索願とか出しているはずなのに警察が介入する気配もない」

春馬の意見に僕もそう付け足した。このケンショウ学級、ただの殺戮ゲームだったとして不自然な程に出来すぎているのだ。

「ならやっぱり初めにアイツが言ってた心理実験の検証が目的って線も無いとは言いきれねぇか。超法的な機関が関わってない限りはこの状況は作り出せない」

「もしくは、僕らの様子を配信していて娯楽にしているヤツがいるって可能性もなくはない……?

って、それはさすがに現実味がないか」

知恵を出し合うけれども行き詰まる。どれも確証がない憶測の域を出ないもの……だけど有り得ないとは言いきれない予想を皆がしている。

「埒が明かないな。あんな狂ったやつのことなんてオレらが分かるわけもないか。

じゃあ次の話に移るぞ。今現状で1番危ないのはアキラだ、正直この後何を言い出すかも分からないし、アイツの思惑通りに狂い始めている」

佐野くんの言葉に皆の表情が一瞬凍りついた。生々しくも鮮明に今朝の金子くんのことを思い出してしまったからだ。
< 203 / 235 >

この作品をシェア

pagetop