ケンショウ学級
監獄生活6日目。
その日の異変は朝からすでに起きていた。僕らがそのことに気づいた時には、また3人ものクラスメイトの命が失われてからだったのだけれど。
「さぁ、起床!囚人達は速やかに整列しろ!!」
アキラの声で僕らは目覚めた。本来であれば春馬と佐野くん、田口くんが先導してくれる手筈になっていたのだけれど、3人の姿はなかった。
「さすがに朝の点呼と体操くらいは任せることになったのかな?」
囚人役にはあまり誰かと相談する時間はなかなかないけれど、看守達は恐らく事務室で自由に話し合いをしたりができるのだろう。
昨日は全部の役目を3人がアキラ達から奪うようにして行っていたから、反論もあったのかもしれない。僕はその程度のイレギュラーだと思い込んでいた。
「10番、10番!起床だ。整列するぞ」
亮二は少し寝ぼけていたけれどすぐに起きてベッドから降りてきた。まだメガネは見つかっていないのか、メガネはかけずに整列していく。
「よし、並んだな。番号!」
アキラの号令で点呼を行った。特に何も起きないことに内心僕はほっとしていた。
「あの、里見看守」
体操の始まる前、僕はアキラに現状を聞く為に手を挙げた。
「……なんだ?06番」
「笹木看守や佐野看守はどこにいるのでしょうか?
……っ!?」
ほんの一瞬。ほんの一瞬だったけれど春馬と佐野君の名前を出した途端にアキラの目付きが変わった。しかしすぐに、その憎悪に満ちた笑顔をおさえて、ごほんと咳払いを一つした。
「今ここにいる看守だけでは不安か?それとも、特別に笹木看守や佐野看守にお願いごとでもあるのか?」
「…………いえ、そんなことはありません」
僕は事務所の中を見た。普段は開放されているカーテンが今日だけ塞がれている。
「さぁ、では体操の時間だ。分かってるとは思うが手を抜いたりなんてするなよ?」
「はい!」
僕はこの時、何故か第一実験と第二実験の時のアイツの出席を取る作業を思い出していた。
皆がいつもよりもしっかりと体操を行っている。その周りをアキラと櫻田くんが厳しい目で見回っていた。粗を探すかのように、執拗に粘着質に一人一人を見回していく。
「おい10番、もっと大きく動け」
体操も終わる頃、急にアキラが亮二に向かってそう言った。個別に注意を受ける程の手抜きなどはなかった。これはもう、ただの言いがかりだ。
「もっとだ!もっと動けるだろう」
目の前で大声て恫喝するアキラに、亮二はギリギリと歯を食いしばって耐えていた。僕達もいつその標的になるか分からない。亮二を心配しながらも、僕は僕でちゃんと体操を行わないといけない。
アキラが厳しい目線で亮二に標的を絞っているとはいえ、まだ櫻田くんの目もあったのだから。
「……櫻田看守」
アキラはふいに振り返って、櫻田くんを呼びつけた。アキラの恐怖は囚人達だけにあるものではなかったようで、櫻田くんの表情は暗い。
「大丈夫だ、心配するな。やってみろって」
「でも、でも、もしも……」
櫻田くんは警棒に手をかけてガタガタと震えていた。そんな櫻田くんの肩をアキラはポンと叩いて、櫻田くんに何かを耳打ちした。
「てめぇも、あいつらみたいになりたいか?」
恐怖から身体をびくっと震わせた櫻田くんは、事務室をわずかに見た。しかしすぐに亮二へと向き直る。
「はぁ、はぁ、はぁ。大丈夫、だってこれは教育だから……
なってないぞ10番!そんなんで一生懸命に体操をしていると言えるのか、この馬鹿野郎が!!」
「なっ!?」
櫻田くんはついに警棒を抜いた。そして。
「これは貴様の為の教育だ!」
警棒で思い切り亮二を打ち付けた。ゴツンと鈍い音がして、亮二がその場で倒れた。
櫻田くんは汗でぐっしょりした制服のまま肩で息をしていた。
その日の異変は朝からすでに起きていた。僕らがそのことに気づいた時には、また3人ものクラスメイトの命が失われてからだったのだけれど。
「さぁ、起床!囚人達は速やかに整列しろ!!」
アキラの声で僕らは目覚めた。本来であれば春馬と佐野くん、田口くんが先導してくれる手筈になっていたのだけれど、3人の姿はなかった。
「さすがに朝の点呼と体操くらいは任せることになったのかな?」
囚人役にはあまり誰かと相談する時間はなかなかないけれど、看守達は恐らく事務室で自由に話し合いをしたりができるのだろう。
昨日は全部の役目を3人がアキラ達から奪うようにして行っていたから、反論もあったのかもしれない。僕はその程度のイレギュラーだと思い込んでいた。
「10番、10番!起床だ。整列するぞ」
亮二は少し寝ぼけていたけれどすぐに起きてベッドから降りてきた。まだメガネは見つかっていないのか、メガネはかけずに整列していく。
「よし、並んだな。番号!」
アキラの号令で点呼を行った。特に何も起きないことに内心僕はほっとしていた。
「あの、里見看守」
体操の始まる前、僕はアキラに現状を聞く為に手を挙げた。
「……なんだ?06番」
「笹木看守や佐野看守はどこにいるのでしょうか?
……っ!?」
ほんの一瞬。ほんの一瞬だったけれど春馬と佐野君の名前を出した途端にアキラの目付きが変わった。しかしすぐに、その憎悪に満ちた笑顔をおさえて、ごほんと咳払いを一つした。
「今ここにいる看守だけでは不安か?それとも、特別に笹木看守や佐野看守にお願いごとでもあるのか?」
「…………いえ、そんなことはありません」
僕は事務所の中を見た。普段は開放されているカーテンが今日だけ塞がれている。
「さぁ、では体操の時間だ。分かってるとは思うが手を抜いたりなんてするなよ?」
「はい!」
僕はこの時、何故か第一実験と第二実験の時のアイツの出席を取る作業を思い出していた。
皆がいつもよりもしっかりと体操を行っている。その周りをアキラと櫻田くんが厳しい目で見回っていた。粗を探すかのように、執拗に粘着質に一人一人を見回していく。
「おい10番、もっと大きく動け」
体操も終わる頃、急にアキラが亮二に向かってそう言った。個別に注意を受ける程の手抜きなどはなかった。これはもう、ただの言いがかりだ。
「もっとだ!もっと動けるだろう」
目の前で大声て恫喝するアキラに、亮二はギリギリと歯を食いしばって耐えていた。僕達もいつその標的になるか分からない。亮二を心配しながらも、僕は僕でちゃんと体操を行わないといけない。
アキラが厳しい目線で亮二に標的を絞っているとはいえ、まだ櫻田くんの目もあったのだから。
「……櫻田看守」
アキラはふいに振り返って、櫻田くんを呼びつけた。アキラの恐怖は囚人達だけにあるものではなかったようで、櫻田くんの表情は暗い。
「大丈夫だ、心配するな。やってみろって」
「でも、でも、もしも……」
櫻田くんは警棒に手をかけてガタガタと震えていた。そんな櫻田くんの肩をアキラはポンと叩いて、櫻田くんに何かを耳打ちした。
「てめぇも、あいつらみたいになりたいか?」
恐怖から身体をびくっと震わせた櫻田くんは、事務室をわずかに見た。しかしすぐに亮二へと向き直る。
「はぁ、はぁ、はぁ。大丈夫、だってこれは教育だから……
なってないぞ10番!そんなんで一生懸命に体操をしていると言えるのか、この馬鹿野郎が!!」
「なっ!?」
櫻田くんはついに警棒を抜いた。そして。
「これは貴様の為の教育だ!」
警棒で思い切り亮二を打ち付けた。ゴツンと鈍い音がして、亮二がその場で倒れた。
櫻田くんは汗でぐっしょりした制服のまま肩で息をしていた。