ケンショウ学級
監獄生活の6日目、亮二の亡骸を前に春馬が言ったことを僕は何度も思い出していた。
「……藍斗、このケンショウ学級を共に終わりにしよう。次の実験では僕の名前を書くんだ」
自白。そう、これは自分が犯人だと名乗り出たことに他ならない。アイツの正体は春馬?
嘘だろ。だって春馬は僕の親友で、スポーツ万能で、誰とでも気さくに話すことができて、女子からも人気があって、正義感が強くて、僕の憧れだった。
信じたくないだけど、これまでも確かに春馬を疑わなければならない場面はあった。
委員長と話したモニターの反転映像も今にして思えば本当だったのかもしれない。春馬の左肩には傷がなかったけれど、右肩は確認していない。だけど、その前の見学検証の時に僕がふいにぶつかった時の春馬は過敏な反応をしていた。もしかすると、右肩が傷んだのではないのか?
僕はペンを手に持った。
ここに春馬の名前を書けば、僕は助かるのかもしれない。だけど、もしも春馬が自白を僕にしかしていなかった場合には原田さんと佐野くんが死んでしまうかもしれない。だったら僕はこのまま何も書かずにペンを置くのが正解なんじゃないのか?
それに、もう1つ気になることがある。アイツは確かに「この教室に犯人がいる」と答えていたけれど、この教室とはどこを指していたのか?
アイツに問いただした皆がいた教室その中に犯人はいる。だけど、アイツは何故「君たちのいるその教室には……」と答えなかったのか?暗くてよく見えないアイツが映し出されるその場所も『教室』だったとしたら?
犯人は僕達のいた教室とアイツの居た教室の2つの教室にいることになる。つまり複数犯であることをアイツは公言したんじゃないだろうか?そうなると春馬のあの言葉の真意も見えてくる。
ケンショウ学級を終わりにする。もし、さっきの説が真実であったとしたら僕達の居た教室にいる犯人は『春馬』で、アイツの居た教室の犯人『○○』を春馬は知っている?それを僕と春馬で回答すればケンショウ学級を行ってきた2人を殺すことができる。つまり、ケンショウ学級そのものを今後一切出来ないようにすることができるってことなのではないか?
「どうすれば良いんだよ……くそっ」
僕は頭を抱えて、髪をくしゃくしゃにかいた。制限時間は刻一刻と迫ってきているのだけれど、それを確かめる術もない。
「待てよ……そうだよ、全員が抜け出せる可能性は0じゃない!」