ケンショウ学級
『囚人達のジレンマ』
上杉藍斗……大上と書き込むが、後から塗りつぶし春馬の途中まで書くも無効票、白紙扱い。
原田悠里……最後の最後までペンを持つことすらせず全員の無事を祈っていた、白紙。
佐野拓哉……開始数秒で乱暴に2文字を書き殴りその後ペンを持つことは無かった。「死ね」と書かれていたが名前ではないので無効票、白紙扱い。
笹木春馬……「大上」と書き正答。
これにより、上杉藍斗と原田悠里、佐野拓哉の部屋には致死率100%の毒ガスが散布され死亡。正答を導き出した笹木春馬1人が見事ケンショウ学級を修了した。
「藍斗……なんで、なんでオレの名前を書かなかったんだよ?馬鹿野郎」
春馬の流した涙は頬をするりとこぼれ落ちて、抱えていた僕の亡骸の頬を伝った。やっぱり、春馬には恨まれることをしてしまったな。
謝ることなどできないのどけれど。
「君は見事にケンショウ学級を修了した。今の気分はどうかな?笹木くん」
教壇では電気ショックによって死んだはずの大上先生の姿があった。春馬は大上先生を睨みつける。
「怖いなぁ。君と僕の仲じゃないか、2人で過ごした時間もそう短くはないというのに。残り少しの時間くらいお喋りに付き合ってくれても良いじゃないか」
「……お前と話すことなんてない。さっさと死ね」
春馬はそう言い捨てる。大上先生は肩を竦めて笑っていた。
「残念だったね、あと少しで君の目論見通り僕と君は死んで上杉藍斗くんだけが生き残ることができたのに、君は彼を守りたいが為に彼との信頼を深め過ぎてしまった。
結果、彼は君がアイツの一味であると確信しながらも君の名前を書くことはなかった。君が彼を守りたかったように、彼もまた君を守りたかったのだろうね」
大上先生は残された時間というものの中で、一方的に春馬に喋り続けていく。
「まぁ、でも良いじゃないか。君は当初の予定通り僕を殺すことができる。あと数刻もすれば、僕は君に名前を当てられた罰によってこの教室で毒ガスに包まれ息を引き取る。
君は机の中にあるマスクを被って生き残る」
春馬の机の中にはたった1つだけマスクが入っていた。春馬はそのマスクをじっと見つめている。その様子を見た大上先生は続けて言う。
「それを被らずに一緒に死のうとか思ってないよね?そんなことは『彼ら』が許さないよ。
もしそんなことをしても、また前回の様に君は病院の一室で目を覚ますことになるだろう」
……僕には結局、『アイツ』の呪いから逃れる術はないということか。
「どうやら毒ガスの散布が始まったようだね、さぁマスクを被りなさい」
春馬は乱暴にマスクを取り出して、そのゴツゴツとした特殊なマスクを被った。
「これで1ヶ月に渡ったケンショウ学級を修了します。それでは、下校の時間です。さようなら」
ガスが満ちる頃にドサッと大上先生が倒れたのを、白い煙越しに春馬は見届けていた。
「……菊の花」
いつの間にか教壇の上にも菊の花が1輪飾られていた。春馬は自分の机の上にあった、白い仮面を持った。しばらくしてガチャっと前の扉の鍵が開く音がした。
「……おやすみ藍斗。みんな」
春馬はそっと僕の亡骸を床に寝かせて、そして煙の向こう、扉の先へと消えていったのだった。
上杉藍斗……大上と書き込むが、後から塗りつぶし春馬の途中まで書くも無効票、白紙扱い。
原田悠里……最後の最後までペンを持つことすらせず全員の無事を祈っていた、白紙。
佐野拓哉……開始数秒で乱暴に2文字を書き殴りその後ペンを持つことは無かった。「死ね」と書かれていたが名前ではないので無効票、白紙扱い。
笹木春馬……「大上」と書き正答。
これにより、上杉藍斗と原田悠里、佐野拓哉の部屋には致死率100%の毒ガスが散布され死亡。正答を導き出した笹木春馬1人が見事ケンショウ学級を修了した。
「藍斗……なんで、なんでオレの名前を書かなかったんだよ?馬鹿野郎」
春馬の流した涙は頬をするりとこぼれ落ちて、抱えていた僕の亡骸の頬を伝った。やっぱり、春馬には恨まれることをしてしまったな。
謝ることなどできないのどけれど。
「君は見事にケンショウ学級を修了した。今の気分はどうかな?笹木くん」
教壇では電気ショックによって死んだはずの大上先生の姿があった。春馬は大上先生を睨みつける。
「怖いなぁ。君と僕の仲じゃないか、2人で過ごした時間もそう短くはないというのに。残り少しの時間くらいお喋りに付き合ってくれても良いじゃないか」
「……お前と話すことなんてない。さっさと死ね」
春馬はそう言い捨てる。大上先生は肩を竦めて笑っていた。
「残念だったね、あと少しで君の目論見通り僕と君は死んで上杉藍斗くんだけが生き残ることができたのに、君は彼を守りたいが為に彼との信頼を深め過ぎてしまった。
結果、彼は君がアイツの一味であると確信しながらも君の名前を書くことはなかった。君が彼を守りたかったように、彼もまた君を守りたかったのだろうね」
大上先生は残された時間というものの中で、一方的に春馬に喋り続けていく。
「まぁ、でも良いじゃないか。君は当初の予定通り僕を殺すことができる。あと数刻もすれば、僕は君に名前を当てられた罰によってこの教室で毒ガスに包まれ息を引き取る。
君は机の中にあるマスクを被って生き残る」
春馬の机の中にはたった1つだけマスクが入っていた。春馬はそのマスクをじっと見つめている。その様子を見た大上先生は続けて言う。
「それを被らずに一緒に死のうとか思ってないよね?そんなことは『彼ら』が許さないよ。
もしそんなことをしても、また前回の様に君は病院の一室で目を覚ますことになるだろう」
……僕には結局、『アイツ』の呪いから逃れる術はないということか。
「どうやら毒ガスの散布が始まったようだね、さぁマスクを被りなさい」
春馬は乱暴にマスクを取り出して、そのゴツゴツとした特殊なマスクを被った。
「これで1ヶ月に渡ったケンショウ学級を修了します。それでは、下校の時間です。さようなら」
ガスが満ちる頃にドサッと大上先生が倒れたのを、白い煙越しに春馬は見届けていた。
「……菊の花」
いつの間にか教壇の上にも菊の花が1輪飾られていた。春馬は自分の机の上にあった、白い仮面を持った。しばらくしてガチャっと前の扉の鍵が開く音がした。
「……おやすみ藍斗。みんな」
春馬はそっと僕の亡骸を床に寝かせて、そして煙の向こう、扉の先へと消えていったのだった。