ケンショウ学級
アイツは満足そうに何かの資料に目を通している。
とはいえ表情も読み取れないほどの暗さだから、どんな資料なのかは見ることができない。
ただこのクラスの誰もが容易に想像ができた。
「どうせろくでもねぇもんだろうが」
それは皆の総意に違いなかった。
けれど、佐野くんの吐き捨てるような呟きに男がピクリと反応する。
佐野くんのグループの田口くんが心配そうな顔で佐野くんを見ていた。
「さて、授業を開始する前に幾つか質問に応えてもらうとしましょうか。
では佐野くん。君は人間の心とはなんだと思うかな?」
突然の問答が始まって僕らは無意識に、回答者となった佐野くんに視線を集めた。
佐野くんは面倒くさそうに言う。
「はぁ?そんなもん分かるわけねぇだろうが」
「た、たっちゃんその答え方はまずいよ多分…………」
この異様な空間で元気な返事をしないだけで、電気ショックの罰で殺すと言うような男だ。
問いに対して明確に答えていない。
それは罰が下されてもおかしくはないかもしれない。
皆が固唾を飲んで見つめていた。