ケンショウ学級

犬のような唸り声をあげて、人間としての尊厳など微塵もない食事を僕らの目の前でしていた男。

裸のまま四つ這いで、よだれを垂らしながら、赤く充血した目はいつもの面影もないけど見間違え様もなかった。

「なんで、なんで野比先生があんなことになってるのよ!?」

それは紛れもなく体育教師の野比先生だったんだ。

生徒の前でこんな醜態を曝すことになって、どんな気持ちなのだろう。

分かんないけど、本当に胸くそ悪い。

「あぁ真緒。君の匂いだ…………

もっといっぱい嗅がせてくれ、前みたいにもっと、もっとおおおお!」

思わず悲鳴をあげそうになる。

それほどの嫌悪感が溢れだした。

正気ではない。

正気だったとしたらそんな言葉を吐けるわけがない。

正気だったらこの場面で、大勢の教え子に見られながら小野さんの失禁の匂いに興奮して男性器を反り上げられるわけがない。

皆には幸いにして見えないと思う。

でも、尻餅をついていた僕は、座り込んでいた一部の生徒にはその生々しく、醜く欲望を膨らませるそれが見えていたんだ。

勿論それは小野さんにも。

「いや、もうしないで。

約束してくれたでしょ?私ちゃんと渡したでしょ!?

嫌なの、怖いの!恐いよぉぉぉぉぉぉぉお!」

小野さんはそう耳を刺すような叫び声をあげ、バタっと倒れた。

「真緒?真緒!しっかりして!」

原田さんが揺するけど反応がない。

手足にも力が入っていない様にも見える。

まさか、極度の精神的なストレスで気絶でもして…………




気絶!?



僕はすぐに野比先生の後ろに設置されたモニターを見た。

「まだ脳波の測定を続けてる…………じゃあ」

最悪のビジョンが浮かび、僕はモニターの中の男を見た。

暗闇の中だから本当に見えていたのかは定かではないのだけれど、確かに男が笑っている様に見えたんだ。

「原田さん、小野さんからすぐに離れるんだ!!!」

僕は飛び起きて一目散に原田さんに駆け寄っていく。

頼む。







ーーーーーーーーーーーー間に合え!!

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