ケンショウ学級
「なぁ、このままだとあの三人…………」
「な、なに怖いこと言ってんだよ」
モニターを直視できているのは10人もいない。
「もう、嫌」
「聞きたくない!見たくない!!」
「帰りたい。帰りたいよ」
この実験でも脳波は取られているはずだけれど、見学検証の僕らの中から罰を受ける人は恐らく居ないだろう。
可能性があるのなら寺井くんだとは思うけど、寺井くんはきっともしもの時には悲しみで気を失うなんてことはないだろう。
それどころか。
「中村さんの様子が明らかにおかしい…………」
小澤さんが中村さんの写るモニターを指差してそう言った。
小澤さんは片方の手で口元を押さえている。
「呼吸が荒い。そのせいで酸素が足りなくなってチアノーゼが身体の至るところに見られる」
顔面や腕、足元など青白く変色した皮膚の中に紫色になった部分が出ている。
「人工呼吸器とかもない施設でここまでの症状が出たらもう…………」
「あとは白仮面が実験を中止してすぐに治療をしてくれれば、もしかしたらだけど。
そんなこと…………」
救命行動など期待はできないだろう。
アイツは大上先生の授業が始まる前、このケンショウ学級を始める時に
「過去の実験ではあまりに過激な内容とおぞましい結果故に途中で頓挫した研究もあったが、最後まで実験を継続する」と言い切っていたのだから。
それにもうすでにアイツは三人の人間を殺している。
今更、中村さんを助ける理由がアイツにあるとはどうしても僕には思えない。
「中村さん!?」
手術台の上で中村さんの身体が大きく数回揺れた。
その揺れが収まると、中村さんの腹部の上下動が一切、なくなった。
「嘘でしょ?」
その様子を隣で観察していた白仮面がゆっくりと近寄ってきた。
そして、中村さんの手首の付け根に指を当て、そして閉じた瞼を開きペンライトで光を当てた。
その瞬間、モニターが切り替わった。