ケンショウ学級
「「80分が経過しました」」
二人の声からどんどん力が失われているのが観てとれるようになった。
「から揚げ食べたいな…………から揚げ」
堀田くんの呟きは誰にも聞こえなかった。
声帯を震わすことのない呼吸音が力なく流れている。
「もう、止めてやってくれよ。どうして友だちがこんな姿になるのを観なくちゃいけないんだよ」
目の前で友だちの命の灯火が儚く散っていく。
ほんの二日前までは一緒に笑って、たまにケンカして、あんまり喋らなかった人もいるけど。
それでも大切なクラスメイトだった。
そのクラスメイトが一人一人と居なくなる感覚。
僕の心に斑点の様な穴があく。
すると急にモニターが切り替わる。
「まさか、紗由理?!」
アイツが現れるということは良くない知らせがあるということだ。
今この時点で言えば中村さんか堀田くんの身に何かがあったということなんだろう。
「検証開始より81分17秒。堀田くんの死亡を確認いたしました。
これよりモニターは眞木さんの画面のみの表示となります。経過観察をしっかりと行ってください」
モニターが切り替わると、三分割にされ中村さんや堀田くんの手術台も映していた画面にはもう、眞木さんを映すモニターしかなくなっていた。
眞木さんは震えながら、涙を流しながら、身体を揺らしていた。
今までは遠くて見えなかった小さな動きまでもが見えてしまう。
苦しみが痛々しいほどに伝わってくるのだった。