ケンショウ学級
いつのまにか僕らは言葉を失っていた。

ただひたすらに眞木さんの無事だけを祈るようになっていたからだ。

90分が経過して出血量は1700ccに差し掛かる。

この時点で眞木さんくらいの体格の人であれば致死出血量に到達している。

まだアイツのモニターへと切り替わらない。

100分、もはや眞木さんに問診への反応はほとんどなくショックによる失神かどうかの判断ができない様になった。

この時の出血量は1899cc、そろそろ成人男性でも死に至る出血量になる。

「そういえば…………これは検証なんだよな?」

僕はそう隣にいた春馬に聞いた。

「あ、ああ。そうだけどどうした?」

「アイツはこの実験では1時間42分で確実な致死出血量に達すると言っていた。

つまり、1時間42分になった時点でもしも眞木さんが無事だったら、アイツにとっての検証成果になるんじゃないかな?」


「…………そうか!

もし、そうだったら眞木さんは後15分くらいで、開放される!」

僕らは目先の希望の光を見つけて、さも出口の見えないトンネルの中で小さな光でも見つけたかのような気分になってしまっていた。

それが、どれほど浅はかな希望であったかを知るのは、この実験が終わってからとなる。

110分経過。

残り2分。

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