ケンショウ学級
「なんか胃が痛い…………」
「気持ち悪い」
「頭クラクラする」
だいたいの人が起きてきて、皆が口々に体調不良を訴え始めていた。
こんな急に、大勢が童子に体調不良になるなんて何が起こっているんだ?
春馬をふと見ると、真っ直ぐ前を向いて何かを考えている様子だった。
「春馬…………?」
その時、教室の外で大きな物音がした。
「きゃっ」
「なんだよ!?」
その物音は教室の前の扉から。
じゃあ、昨日と同じならご飯かな?
「やぁ、おはよう生徒達」
その時、スキャナーが独りでに動いてモニターにアイツが写し出された。
もやっとした感情が沸き上がるのを、まざまざと感じる。
「今日は皆が好きなカレーを頼んでみたよ。おかわりはないが大盛にしたからね。
沢山食べておくれ。ああ、そうそう。勿論"食べ物を粗末にすることは許さない"けれどね」
その一フレーズで僕らは凍える様な背筋の寒気を感じた。
…………ったく、なんて趣味の悪い。
「じゃあ、雨宮さんと野中くん、濱田くん配膳を」
アイツに指命された三人がお互いに心配そうに目配せをして、ゆっくりと立ち上がった。
「では、他の人は席につくように」
体調不良を訴える友だちを励ましていた数人がゆっくりと席に戻っていく。
佐野くんも嫌々戻ろうとしたが、寺井くんは眞木さんを抱きしめたまま動こうとしない。
「寺井。いくぞ」
寺井くんは力一杯に眞木さんを抱きしめて、涙を流している。
佐野くんはもう一度だけ低い声で言うのだった。
「今は、行くぞ」
そう言って席に戻る佐野くん。
続くようにして田口くんも、寺井くんの背中をぽんと叩いて席に戻る。
寺井くんは眞木さんを抱き締めていた腕をはなした。
そして、力なく後ろに倒れようとする眞木さんの身体をゆっくりと優しく、机に身体を預けるようにしてあげた。
「紗由理、助けるから。絶対に助けるから」
ついに寺井くんも席につく。