ケンショウ学級

「じゃ、じゃあ…………いただきます」

「いただきます」

友澤くんは挨拶をしてからしばらく皆を見つめていた。

特に大盛カレーを配られた僕たちの様子を気にしていたようだった。

責任感が強くて優しい彼のことだから、もし自分が大盛カレーに当たっていたとしたら、他の大盛カレーの人を手伝おうとしただろう。

それができない悔しさに、顔を歪めている。

「ふぅ。近くで見ると結構な量だね」

「うん…………」

僕は小池っちと目を合わせる。

「僕こんな食べきれる自信ないよ」

「うん…………

とにかく食べれる内に掻き込もう。確か20分くらいすぎると満腹感が出てくるはずだ。

それまでにできるだけお腹に入れるんだよ」

自分に言い聞かせるようにして小池っちにそう伝えた。

そして深く息を吐いて、僕は決意を固める。

「いただきます!!」

スプーンを持って、大口でガツガツと掻き込んでいく。

もう、美味しいとか美味しくないとかそんなことは感じなかった。

ご飯が残ると後々しんどそうな気がするから、ごはんの分量を多くして口に運ぶ。

「うぷっ、胃が受け付けない」

これまでの精神的なストレスや身体的な疲労も重なり、スプーンの進まないクラスメイトが多かった。

でも、今は周りを気にしている余裕はない。

僕は意識的に周りを見ないようにして、次々とカレーを飲み込んでいく。

「うっぷ。。。」

ようやく半分ほどになった、その時だった。

「っしゃあ!食ったぞ!」

そう叫んで、乱暴にスプーンを置いたのは寺井くんだった。

寺井くんは間髪入れずに立ち上がり、眞木さんの机に近づいていく。

そして、カレーのトレーを手にした。

「紗由理ゆっくり休んでな。これはオレがどうにかするよ」

眞木さんに反応はない。

それでも不安な表情一つ見せずに寺井くんは眞木さんのカレーを自分の席に運んでいった。

その姿は素直に格好良かった。

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