99%思い通り
遠くから聞こえてきた、聞き覚えのあるエンジン音に、トクンと心臓が反応する。
リツ……?
立ち上がった勢いで、乾いた砂がパラパラと舞い落ちる。
さっきリツが走り去った方へと視線を凝らすと、一台の車が停車し、遠くを照らすヘッドライトがそっと消された。
暗闇に降り立った人影が、そのままゆっくりと砂浜へ足を踏み入れる。
徐々に大きくなるその影は、月の光を浴びたリツだった。
「何しに来たの? 何か言い忘れたことでもあった? わがまま女の困り果てた顔でも見てやろうってところ?」
驚くほど滑らかに言葉が出てくる。
リツが憐れむように私を見つめるから、余計に惨めになる。
その視線を振り払うように居丈高と言い放った。
この期に及んで、弱気な自分を見せたくないなんて本当にどうしようもない女だ。
「それなら無駄な骨折り。全然何て事ないもの。別に、リツがいなくたって……。
ちょっと海風に当たっていただけだし。もうすぐ迎えの車が来るから」