99%思い通り
「あ、えっとね……」
海に投げ捨てたなんて言えない。
かといって、他に用意された言い訳もない。
「まさか……海に、とか言わないよね?」
……お見通しだとは。
小さくコクンと頷いた。
「信じられない……」
リツは頭を抱えて、大袈裟に嘆いて見せた。
リツがくれたものなのに。
最低の女だ。
「……ごめんなさい」
謝る私を横目に追い越し、リツが波間に向かって走り出す。
そして、水に濡れることもいとわずに、あっという間に膝まで海に浸かってしまった。
ミュールを探し出すつもりなのか、手を伸ばして足元を探る。
そんなことをしたって、もう見つからないだろうに。
月がリツの手元を優しく照らすけれど、沖へとさらう波の力には敵いっこない。
でも、いつだってそうして一生懸命で、全力で私を包み込んでくれていたのに。
リツの真剣な横顔に胸が苦しくなる。