99%思い通り
気付かないうちにリツに惹かれていく自分をどこかで認識しながら、一度拒んでしまった手前、素直になれなかった。
強がることで、臆病な自分を誤魔化して、リツの愛情を吸い取るだけ吸い取った挙句、自分の気持ちの一切を隠し通してきた。
今更かもしれない。
でも、そんな卑怯な私がリツを得るためにできることは……。
電気を落とした部屋でひとり、耳を澄ませて集音力を高める。
遠くから聞こえる耳慣れたエンジン音が近づくと、途端に浮かれだす私の心。
急いでミュールを引っ掛け、階下へと向かった。
「こんな真夜中に海なんて、美玖(みく)さんらしいね」
こんな遅い時間にも関わらず、涼しい目元は健在で、夜更けだというのに、まるで朝の爽やかな風を受けているように錯覚さえしてしまう。
穢れのない純粋なリツの前では、自分の醜い心ばかりが際立って、時々ものすごく怖くなる。
あまりに眩し過ぎて、目をそらしてしまう。
リツに見つめられると、身動きができなくなるほどだった。