99%思い通り
初めて見る冷たい目に、思わず怯んで何も言い返せない。
自分の身に何が起きているのかさえ分からないまま。
冷やかに言い捨てると、リツは再び運転席へと乗り込み、そのまま車を発進させてしまった。
初めてのリツの反乱だった。
主導権を握っていたはずの手元が空を切る。
慌てて手のひらを開いてみても、そんなものは跡形もなく消え去っていた。
「ちょっと! リツ!?」
もう一度掴もうと右手を伸ばす。
その手はドアミラーをかすめたのに、リツはわざとらしく私から視線を外し、エンジン音を響かせて走り去って行った。
遠くなるテールランプを見送りながら、やっと事態を呑み込む。
私は、置いていかれたのだ。
……捨てられたのだ。
あのリツに……?
いつだって私の言うことを聞いてくれたリツに……?
真夜中にこんなところに女を置き去りにするなんて、いい度胸だ。
リツなんか……。
リツなんて……。
こんなに好きなのに――。