夜明けの恋人。
「…その人ね、東雲泰介さんっていう人で、
これを…預かったの。息子に渡してくれって…」


「…んな」


え?
東雲…?


「ざけんなっ!!」


自分の身体がビクッとしたのを感じた

「東雲…」


「あ…わりぃ…
夜見は何も悪くねぇのに…俺、情けねぇな」

ははって自嘲的に笑う東雲は
まるで消えてしまうかのように何かが抜けていた


「…夜見、あいつが起こした事故のせいで苦しんだよな…ほんと、ごめんな…」


ねぇ、東雲
今、どんな顔してるの?

そんなに悲しい声で、
何を抱えているの?


「東雲、違う…あたしは泰介さんに感謝してる…!」


あたしの本心。

東雲と泰介さんの間にどんな溝があったか
あたしにはわからない

もしかしたら一生わからないままかもしれない

でも、
今できるあたしなりの精一杯を伝えたいんだ
< 160 / 213 >

この作品をシェア

pagetop