俺様社長と結婚なんてお断りです!~約束までの溺愛攻防戦~
「はぁ!? あんなハゲ親父と親戚になるなんてまっぴらだ」

洸は不快感を露わに眉間に皺を寄せた。
その顔を見て、誠治は推測が外れたらしいことを悟ったようだ。

「じゃあ誰だよ? モデルの千華? 女優の伊賀 菜々子?」

どちらもプリュムの広告モデルで、あからさまに自分を狙っていたことを洸は思い出した。

が、どっちも全然好みじゃなく、手を出す気にもならなかった。


洸は作業の手を止め誠治の方に顔を向ける。そして、ニヤリと笑って言った。


「羽衣子だよ。 あいつもそろそろいい年齢だし、貰ってやろうかと思って」


「・・・」


誠治は驚きのあまり声も出ないようだ。
洸が何やかんやで羽衣子を気に入っているのは誠治も知っているだろうに。

長い沈黙の後、ようやく誠治が口を開いた。


「・・・羽衣ちゃんて、全然お前を好きなようには見えないんだけど。 俺の目が節穴なのか?」

「ん? そりゃ、好きじゃないだろうな。まぁ、これから好きにさせるから問題ないだろ」

洸は平然と言ってのける。

「何だよ、それ。 なんで、いきなり結婚なんだ?」

「そういう約束だから」

「それ、羽衣ちゃん絶対覚えてないだろ・・・洸、顔が良きゃ何でも許されると思うのは間違いだ。
お前の今の思考回路は、はっきり言ってストーカーと代わんないぞ」

「羽衣子はストーカーされても、どうせ気づきもしないから犯罪にはならん」

「そういう問題じゃ・・」

誠治は呆れ果てて説教する気にもならず、ただただ羽衣子の災難に同情する。

「覚えてなくても、約束は約束。 しっかり守ってもらわなきゃな」

洸は新しいおもちゃを見つけた子供のような顔で微笑んだ。

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