俺様社長と結婚なんてお断りです!~約束までの溺愛攻防戦~
現在のプリュムにはデザイン室という部署があり、15人程の専属デザイナーを抱えている。
けれど、初期の頃は客の希望に応じてデザイン画を描くところから全て洸が担当していた。

今でも昔からの常連客の中には洸のデザインを希望する人がいるから、今日もきっとそんなところなのだろう。

サンプルが仕上がると羽衣子に試着させるのもいつものことだった。
洸いわく、
「モデルや女優みたいな美人は数百円のおもちゃをつけてたって様になるんだよ。お前みたいな平凡な女を格上げするのが本物のジュエリーだろ」だそうだ。


だから、羽衣子はプリュムの商品をいつだって一番初めに身につけさせてもらっている。おこがましい気もするけど、忙しい毎日の中で一番楽しみな瞬間でもあった。


今日の指輪はどんな風に仕上がったんだろう。羽衣子はワクワクしながら、車が美羽町に着くのを待った。





「おらっ。起きろ、バカ」

頬に痛烈な痛みが走り、羽衣子ははっと目を覚ました。
鼻が触れ合うほどの距離に鬼の形相をした洸の顔。美形なだけに怒ると凄みを増す。

「社長に運転させて寝てるとは、いい度胸してんなぁ」

「ーーごめんなひゃい」

洸が両の頬をつねってるので、うまく喋れない。
どうやらいつの間にか寝てしまっていたようだ。
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