俺様社長と結婚なんてお断りです!~約束までの溺愛攻防戦~
羽衣子も含めたそこらへんの女の子よりずっと綺麗な洸のアーモンド型の目。
どこまでも深い黒い瞳。

もう飽きるほどに、見慣れているはずなのに・・・。

どうしてか初めて見るような気がして、羽衣子は目をそらせなかった。

今、羽衣子をじっと見つめている洸は、羽衣子のまるで知らない男の人みたいだ。

甘いように見せかけて、本当は毒を忍ばせてる。そんな視線に羽衣子は絡め取られてしまった。

「女を連れてきたのは、羽衣子が初めて。これから先も羽衣子以外の女とは来ないよ」

洸の長い指先が伸びてきて、羽衣子の頬にそっと触れる。
触れられている側の頬に身体中の熱が集まってくる。心臓がどくんと大きく跳ねた。

それを見た洸がふっと口元を緩ませた。

「顔、真っ赤」

「〜〜っ。今のは不意打ち!」

「俺の色仕掛けは見慣れてるんじゃなかったの?」

洸は獲物を狙う肉食獣のような目をして、羽衣子との距離をぐっとつめる。

「・・・見慣れてるけど、よく考えたらされるのは初めてだった」

悔しさと恥ずかしさで羽衣子の声は消え入りそうに小さかった。
羽衣子は洸の手を振り払うと、ぷいっと顔を背ける。


「ーー本気出した甲斐がちょっとはあったかな」

嬉しそうにつぶやかれた洸の言葉は羽衣子の耳には届いていない。


羽衣子は黙々と目の前の料理を口に運びながら、自問自答を繰り返している。

ーー洸ちゃんと一緒にいて、こんなに落ち着かないことって今まであった!?
ーーいや、ない。こんなの初めてだ。

ーーあんなふざけ半分の色仕掛けに、ハマってしまったんだろうか。
ーーだとすると、モテる男って怖い! 怖すぎる!!

「何をぶつぶつとしゃべってるんだ?」

「きゃあ!!ーーちょっと、近いよ。洸ちゃん」

鼻が触れ合いそうなほどに顔を近づける洸を羽衣子は思い切り押し返した。
洸は怪訝そうに眉をひそめながら言う。

「デザートプレート、食わないのか?
好きだろ、甘いもの」

視線を落とせば、羽衣子が気づかぬうちに今日のディナーの最後の一皿であるデザート盛り合わせが運ばれてきていた。

宝石のように美しいショコラが三粒、鮮やかなラズベリーピンクとピスタチオグリーンのマカロン。ドーム型のチーズケーキには美しい飴細工が飾られている。

洸の言う通り、羽衣子は甘いものに目がない。いつもなら、どんなにお腹がいっぱいでもひとくちも残さず平らげるだろう。

だけど今日は、何だか胸がいっぱいで・・
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