俺様社長と結婚なんてお断りです!~約束までの溺愛攻防戦~
「お持ち帰り‥‥かぁ。パワフルだなぁ、川上さんは」
随行業務はずっと羽衣子の仕事だった。羽衣子が忙しいからって他の子を行かせたりすると、洸は決まって不機嫌になった。その洸が自ら川上さんに随行をお願いした。
秘書室チーフを川上さんに譲って、自分は美羽町に戻る。それは羽衣子が望んでいたことなのだから、事態はとてもいい方向に進んでいると言える。川上さんはミーハーだけど、洸の嫌いな打算的なタイプではない。あの二人は案外気が合うような気がする。
「うん、いいことじゃない!」
羽衣子は自分に言い聞かせるように大きな声を出すと、デスクに戻り仕事を再開した。チクリ、チクリと胸を刺す痛みに気がつかない振りをするために、一心不乱にキーボードを叩く。
ルルル、ルルル。
ようやく顧客リストが完成したところで内線が鳴った。羽衣子は素早く受話器を取る。
「はい。社長室、秘書の茅野です」
「おつかれさま。羽衣ちゃん?」
受話器から届く柔らかく落ち着いた声に羽衣子の心はふっと緩んだ。
「いっちゃん!おつかれさまです」
「今日は洸、戻らないんだろ?早めに仕事片付けて飯でも行かないか?羽衣ちゃんの食べたいものご馳走するよ」
「いいの⁉︎ じゃあね〜、焼肉!あの大通り裏のホルモンが美味しいお店がいいな」
「おっ、いいね〜!じゃあ7時にお店待ち合わせな」
定時ぴったりには上がれない羽衣子の性格を理解している誠治は定時の1時間後を指定してきた。こういう気遣いをさりげなく出来るから誠治は女の子達に人気があるのだろう。
「‥‥きっとお見通しなんだろうな」
受話器を置いた羽衣子は、ひとり苦笑した。誠治と洸と三人で食事に行ったことは何度もあるけど、こんなふうに誠治が羽衣子を誘うことは珍しい。きっと洸と羽衣子の仲がおかしいのを察したのだろう。
随行業務はずっと羽衣子の仕事だった。羽衣子が忙しいからって他の子を行かせたりすると、洸は決まって不機嫌になった。その洸が自ら川上さんに随行をお願いした。
秘書室チーフを川上さんに譲って、自分は美羽町に戻る。それは羽衣子が望んでいたことなのだから、事態はとてもいい方向に進んでいると言える。川上さんはミーハーだけど、洸の嫌いな打算的なタイプではない。あの二人は案外気が合うような気がする。
「うん、いいことじゃない!」
羽衣子は自分に言い聞かせるように大きな声を出すと、デスクに戻り仕事を再開した。チクリ、チクリと胸を刺す痛みに気がつかない振りをするために、一心不乱にキーボードを叩く。
ルルル、ルルル。
ようやく顧客リストが完成したところで内線が鳴った。羽衣子は素早く受話器を取る。
「はい。社長室、秘書の茅野です」
「おつかれさま。羽衣ちゃん?」
受話器から届く柔らかく落ち着いた声に羽衣子の心はふっと緩んだ。
「いっちゃん!おつかれさまです」
「今日は洸、戻らないんだろ?早めに仕事片付けて飯でも行かないか?羽衣ちゃんの食べたいものご馳走するよ」
「いいの⁉︎ じゃあね〜、焼肉!あの大通り裏のホルモンが美味しいお店がいいな」
「おっ、いいね〜!じゃあ7時にお店待ち合わせな」
定時ぴったりには上がれない羽衣子の性格を理解している誠治は定時の1時間後を指定してきた。こういう気遣いをさりげなく出来るから誠治は女の子達に人気があるのだろう。
「‥‥きっとお見通しなんだろうな」
受話器を置いた羽衣子は、ひとり苦笑した。誠治と洸と三人で食事に行ったことは何度もあるけど、こんなふうに誠治が羽衣子を誘うことは珍しい。きっと洸と羽衣子の仲がおかしいのを察したのだろう。