俺様社長と結婚なんてお断りです!~約束までの溺愛攻防戦~
「という訳なので、渡航先とスケジュールが決まったらご連絡ください。なにがなんでもスケジュール調整して、永瀬を向かわせますので」

「ありがとう、ウイコ。コウは意外と尻に敷かれるタイプなのね。日本の女性は夫を立てているように見せて、実は手の平で転がすって言うものね!

それじゃあ、コウ。次会う時は空港ね」

リー・マーロウはにっこりと微笑むと、軽やかに手を振り部屋を後にした。

「お前な‥‥絶対大丈夫なんて、なんの根拠があって‥‥」

洸は応接室の高い天井を仰ぐと、どさりと音をたててソファに身体を沈めた。
羽衣子も真似して同じようにソファに座る。

「まぁ、万が一失敗しちゃったらまた永瀬宝飾店からやり直せばいいじゃない!
私、永瀬宝飾店の店主とだったら結婚できそうな気がするよ」

「俺がニューヨークで大成功して、世界的企業の経営者になったら? その場合は結婚してくんないの⁉︎」

「う〜ん、そんなすごい人の奥さんになる自分は想像できない‥‥」

羽衣子は正直に答えて苦笑した。

「お前は俺に失敗しろって言ってんのか⁉︎ 意味わかんねぇ‥‥」

洸はクシャクシャと頭をかいた。その様子はなんだか子どもっぽくて、昔に戻ったみたいだった。

「大体さ、本格的に海外進出ってなったら俺は何年も何十年も向こうで暮らすことになるぞ」

「もちろんわかってるよ」

羽衣子だってそのくらいはわかったうえで、リー・マーロウにああ言ったのだ。

「寂しくないの?」

洸はゆっくりと羽衣子に顔を向ける。

「寂しくなんてないよ」

羽衣子は早口で答える。

「‥‥じゃあさ」

洸は羽衣子の両肩に手をかけ、強引に自分の方を向かせた。間近で視線がぶつかる。リー・マーロウの瞳も吸い込まれそうに美しかったけど、洸の熱を帯びた瞳も負けないくらいに妖艶だ。怪しい魔術にでもかけられたみたいに、羽衣子は目を逸らすことができない。

「なんで、そんな泣きそうな顔すんだよっ‥‥好きでもなんでもない、人使いの荒い社長がいなくなるんだからもっと嬉しそうにしとけよ」

洸はきゅっと羽衣子の頬を軽くつねった。

「嬉しいよ! 洸ちゃんがいなくなれば、秘書室メンバーに嫌われることもないだろうし、早く帰って大好きなドラマ観れるし、ヒマになるから彼氏だって出来ちゃうかもね!」




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