キミは空に輝く

どれくらい走っただろう。


冷たい空気には、私の息が白く浮かぶ。


私は疲れた足を引きずり、


見つけた公園のベンチに座る。


頭に浮かぶのは、


男の人に寄りかかる母の姿。


悲しいような、怒りのような感情に


思わず涙が浮かぶ。


(お母さん…もう恋愛はこりごりだって

言ってたのに…!)


恋愛する勇気が持てない自分よりも、


その原因になった母が先に


過去を乗り越えたと思うと、


なんとも言えない気持ちが込み上げる。


私はうつむいて歯を食いしばり、


流れようとする涙を必死にこらえていた。


その時、聞きなれた声が聞こえた。


「六花ちゃん…?」


驚いて顔を上げると、


そこには


何度も私の冷えた心を温めてくれた


太耀君の姿があった。


私がいる事に驚きながら近づいてくると、


目に涙を溜めた私を見て慌てる。


「こんなところでどうしたの!?

寒くない?っていうか…泣いてるの!?」


そう声をかけられた瞬間、


我慢していた私の涙が溢れ出した。


太耀君は驚きながらも、


私の隣に静かに腰を下ろすと、


何も言わず、優しく背中をさすってくれた。



太陽が完全に沈み、


暗くなった静かな公園の中で、


私の泣き声だけが響いていた。

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