キミは空に輝く

しばらくして、


やっと落ち着きを取り戻した私は、


泣き顔を見られないように


うつむきながら話しかける。


「驚かせてごめんね…。

まさか、太耀君に会うなんて思わなかった。」


太耀君は、まだ私の背中をさすりながら


心配そうに応える。


「うちすぐそこなんだ。

…話したくなければ無理しなくていいけど、

俺で良かったら何でも聞くからね…。」


――…。


優しい言葉と、背中に感じる温もりに、


私の冷えた心と体が温まっていく。


私は、勇気を出して話し出す。


「うち…両親が離婚してて、

昔はすごく仲良かったのに、

別れた時お母さんも私もすごく辛くて…っ。」


また泣き出しそうになる私を、


太耀君は静かに見つめている。


「こんな辛い別れがあるなら、

初めから側にいる幸せを知らなきゃ

いいんだって…そう思ってた。」


母の悲しそうな顔を思い浮かべ、


裏切られたような気持ちでつぶやく。


「お母さんも同じ気持ちだと思ってたのに、

もう新しい男の人がいたみたい…。」


私は無理して笑顔を作ろうとするが、


うまく笑えているのかわからない。


すると、そんな私を見て


太耀君が静かに口を開いた。


「確かに、これから先の事なんて

俺にも…誰にもわからないよ。」


真面目な口調に、


呆れられてしまったかもと思い、


慌てて謝る。


「そうだよね…!ごめんね…。」


「でも…」


――!…


突然、太耀君が私の手を優しく握った。


「でも、俺は今…六花ちゃんの

側にいたいって思ってる。」


突然の事に驚きながら、太耀君を見ると、


真っ直ぐに私を見つめる目と合った。



……………。


静まれ…私の心臓。


繋がれた手から、


太耀君に伝わってしまうんじゃないかと


思えるくらい、激しい鼓動が聞こえる。


(私も…太耀君の側にいたいよ…。)


そう思うのに、それを伝える勇気が


私にはまだ足りない。


でも…あと少し。


あと少しで、私変われると思う。


太耀君のおかげで、


前に進む勇気…沢山もらえたよ。


冷えきった寒空の下で、


繋がれた手だけが…温もりに包まれていた。

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