キミは空に輝く

家の中に入ると、


パタパタとスリッパの音を鳴らしながら、


女の人が近づいて来た。


「まぁ、可愛らしいお嬢さんね。

いらっしゃい。」


太耀君に似た優しい笑顔を見て、


お母さんだとすぐにわかる。


「突然すみません!!

私太耀君のクラスメイトの橘六花です!」


深くお辞儀をする私に、


太耀君が慌てて声をかける。


「そんな気使わなくて大丈夫だよ!

母さん、六花ちゃんすごい体冷えてるから、

温かい飲み物出してあげて。」


「あら、それは大変!

こっちに来てストーブで暖まって。」


優しい手に引かれ、


不意にお母さんの事を思い出す。


(きっと…今頃心配してるよね。)


そう思いながら、


リビングに足を踏み入れると、


先程の美人2人が待ち構えていた。


「六花ちゃんっていうんだー!

太耀の彼女?

あんたもやっと恋に目覚めたんだー。

これで姉ちゃん達もひと安心だよ!」


――!


『彼女』と言う言葉にドキッとしていると、


太耀君が顔を真っ赤にして反論する。


「そんなんじゃなくて、友達だから…!

だいたい俺が恋愛できないのは

姉ちゃん達のせいなんだからな…!」


すぐに否定されたことに、


少なからずショックを受けるが、


本当の事だから仕方がない。


「なんだー。つまんないの!

中3にもなったら、彼女欲しいとか、

女の子と手繋ぎたいとか思うのが

普通でしょ…!?」


――!

――!!


さっきまでの公園でのやり取りを思いだし、


私達は一緒になって顔を赤くする。


お姉さん達に気づかれないように


うつ向いていると、


目の前にあるテーブルに、


湯気の上がるマグカップが置かれた。


「あ、ありがとうございます!」


慌てて顔を上げてお礼を言うと、


太耀君のお母さんはまた優しく笑ってくれた。


「ったく、姉ちゃん達はうるさいから、

早く自分の部屋に行ってよ!」


太耀君がお姉さん達を押しながら、


リビングから遠ざかっていく。


部屋の中には2人が残され、


私は緊張しながらココアに口を付ける。


その間も、太耀君のお母さんは


何も言わずに見守ってくれているようだった。

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