キミは空に輝く
太耀君と同じ、
心が温かくなるような雰囲気に、
私は思わず話はじめていた。
「実は…母とケンカをしてしまって…。
家を飛び出してきてしまったんです…。」
私は簡単に自分の状況を話し、
太耀君のお母さんは相槌をうちながら、
静かに話を聞いてくれた。
(あ…話しただけなのに、
なんか…気持ちが軽くなった気がする。)
同じ母親という立場の人に
話を聞いてもらえたからだろうか、
今なら母と素直に話せそうな気がした。
「私…お母さんに電話してみます!
きっと、心配してると思うから…。」
そう言うと、太耀君のお母さんは
笑顔で頷いてくれた。
「六花ちゃんのお母さんもきっと、
ちゃんとお話したいと思ってるよ。
頑張ってね。」
その言葉に背中を押され、
私は母に電話をかけた。
―――――
「今日は本当に、
突然お邪魔してすみませんでした!」
深々とお辞儀をする私に、
太耀君の家族は優しく声をかけてくれる。
「またいつでもいらっしゃい。」
「次来たら太耀の面白い話色々聞かせて
あげるからねー!」
「ばっ…!やめろよ海姉ちゃん!
六花ちゃんも、ぜひとか言わないでよ!」
笑い声に包まれる、温かい家族。
(私も早くお母さんの所に帰らなきゃ…。)
勇気を出して母に電話をかけると、
全ては私の誤解で、
会社で体調を崩した母を送ってくれた
同僚の方が肩を貸していただけだとわかった。
自分のとんでもない誤解のせいで
みんなに迷惑をかけてしまったが、
そのおかげで自分の気持ちの整理や、
太耀君の家族と出会えたと思えば、
無駄な事は1つも無かったと思う。
私は太耀君の家族に改めてお礼を伝え、
みんなに見送られながら、
母の待つ家へと足を向けた。