キミは空に輝く
2人の距離
いつもより冷え込んだ朝、
窓の外には白い世界が広がっていた。
あっという間に月日は流れ、
もう12月中旬を迎える。
太耀君とはあの日以来、
特に大きな進展はしていないが、
目が合うたび、声を聞くたびに、
胸がドキドキしてしまう。
(太耀君も同じような気持ちで
いてくれたら嬉しいな…。)
そう思いながら、
今日も彼のいる教室へと急ぐ。
「太耀君、おはよう。」
「おはよう…。」
いつも通り挨拶をするが、
今日は少し太耀君の様子が
おかしいような気がする。
さっきから、手元に何か隠して
そわそわしているように見える。
(どうかしたのかな…?)
私は気になりながらも、
ホームルームが始まり前を向いた。
しばらくすると、右隣からカサッという
音が聞こえて、折られた紙が置かれていた。
(太耀君から…手紙?)
太耀君の方を見るが、
うつ向いてこっちを見ないようにしている。
不思議に思いながら紙を開くと、
そこにはいつもより少し丁寧な字が
書かれていた。
『クリスマスは予定ある?』
思いがけない内容に、一気に顔が熱くなる。
私は少し気持ちを落ち着かせてから、
ゆっくりと返事を書いて渡す。
『今年はお母さん仕事だから、
1人で家にいる予定だよ。』
太耀君はじっくり文字を読むと、
手元にいくつか用意してある紙の中から
1つを選んで、また私の机に置いた。
『もし良かったら、うちに来ない?
母さんも姉ちゃんも六花ちゃんに
会いたいから呼べってうるさくて。』
手紙…家で書いて用意してきたんだ…。
そう思うと、何だかおかしくて、
私は思わず顔をほころばせた。
そして、急いで返事を書いて渡す。
『嬉しい!!迷惑じゃないなら行きたい!』
それを見て、太耀君は緊張が解けたように
息を吐きながら一気に机に顔を伏せた。
その姿を見て、愛しい気持ちが込み上げる。
私は再びメモ帳を取り出すと、
今の気持ちを書いて太耀君の机に乗せる。
音に気づいた太耀君が顔を上げ、
メモを開く。
『誘ってくれてありがとう。
太耀君と過ごすクリスマス楽しみ!』
中を見て、また太耀君は机に伏せてしまった。
ホームルームが終わり、
みんなの話し声で教室が騒がしくなる。
すると、太耀君が私の方を見て口を開く。
「俺も、すごい楽しみにしてるから…。」
そう言われて、私は無言で頷く。
次の授業が始まるまで、
私達は2人顔を赤くしたまま
静かにうつ向いていた。