キミは空に輝く
結局、私は午前中の授業が終わるまで、
保健室で過ごした。
寝不足のせいもあって、
体調が良くないのも確かだったため、
先生に疑われる事もなかった。
「受験前の大事な時期だし、
今日は帰りましょうか。
荷物は友達に持って来てもらうわね。」
そう言われ、教室に戻る勇気のなかった私は
ほっと胸を撫で下ろす。
(でも…今日はこれでよくても、
明日からも毎日顔を合わせるんだ…。)
これからの事を考えながら、
私は重い足取りで学校を後にした。
目的もないまま歩き続け、
辺りはもう日が落ちて暗くなり始めていた。
その時、ふと前方に見たことのある
女の子の姿を見つける。
「…月子ちゃんっ!」
私は声を上げながら、思わず駆け寄った。
月子ちゃんは、あからさまに嫌な顔をして
無視して目の前の塾に入ろうとする。
私は咄嗟に手を掴み、頭を下げる。
「お願い!聞きたい事があるの!」
小学生に頭を下げる私に、
周囲から好奇の目が向けられる。
恥ずかしさに耐えかねたのか、
月子ちゃんが諦めたように言う。
「ちょっと…わかったから辞めてよ!
とりあえず、そこの公園に移動するわよ…!」
私達は塾のすぐ側にある公園へと
足を向けた。
「聞きたい事って何…?
塾の時間だから手短にしてよ…。」
「ごめんね…。あの、太耀君が
お父さんのとこ行くって聞いて…。」
勢いで呼び止めてしまったが、
まだ頭の中が整理できず、
うまく話す事が出来ない。
そんな私を見て、月子ちゃんはため息をつく。
「もう…!何なの!? 2人してウジウジして!
好きならちゃんと本人と話しなさいよ!」
3つも年下の女の子に叱られるなんて…
情けないと思っていると、
信じられない言葉が聞こえてきた。
「あんたがいなければ、
一緒にお父さんのとこ行けたのに…。」
「……え?」
月子ちゃんは、悔しそうに私を睨みながら
話を続ける。
「だから…!あんたのせいで太耀が
こっちに残りたいなんて言い出したのよ!!」
(太耀君は…こっちに残りたい…?)
予想もしていなかった話に
言葉をなくしていると、
後ろから聞き慣れた声が聞こえた。
「六花ちゃん…!?」
それは、今一番聞きたいと思っていた
彼の声だった。