キミは空に輝く
空に輝く

声に振り返ると、


太耀君が急いで走って来るのが見えた。


「何で…月子と一緒に?

それより…俺、六花ちゃんに謝りたくて。」


申し訳なさそうにうつ向く太耀君に、


月子ちゃんが不機嫌そうに声をかける。


「何で太耀がここにいるの…?」


「あ…月子に塾の宿題届けろって言われて

追いかけて来たんだ。」


太耀君が紙の束を差し出すと、


月子ちゃんは奪うように受けとる。


「だいたい、太耀がハッキリ言わないから

いけないのよ!

男なら決めた事ビシッと言いなさいよ!!

…じゃあ、私塾だから…。」


月子ちゃんはそう言うと、


振り返る事なく塾へと入って行った。


私達は2人きりになると、


お互い気まずさから無言になってしまった。


(太耀君に、ちゃんと聞かなきゃ…。)


気持ちばかりが焦り、


なかなか話し出せないでいると、


太耀君が突然、私に向かって頭を下げた。


「六花ちゃんごめん!!」


顔を上げると、やっと私達は目を合わせた。


「太耀君がお父さんのところに行くって

聞いて…。私、何も聞いてなくて…。」


「話してなくてごめん…。

その話が出てたのは本当だけど、

俺は、こっちに残るつもりだから…!」


聞くのが怖いと思っていた太耀君の口から、


信じられない言葉が聞こえ、


私は声を震わせながら問いかける。


「ほん…とに…?」


太耀君はそんな私を安心させようと、


そっと手を握ってくれる。


「ほんとは、ちゃんと言う資格ができてから

言おうと思ってたんだけど…。」


私は、太耀君の話に静かに耳を傾ける。


「父さんのところに行く話は、

六花ちゃんが転校して来る前から出てたんだ。

でも…六花ちゃんに出会って、

初めて側にいたいって思える人が

できたんだ…。」


太耀君の言葉に、胸が熱くなる。


(太耀君も、同じ風に思ってくれてた…。)


私は、嬉しくて繋がれた手を強く握った。


太耀君は私の方を見て、


照れたように微笑むと話を続けた。


「両親に、どうしても側にいたい人がいるから

こっちに残りたい…って言ったら、

条件を出されちゃって…。」


「条件…?」


「うん。独り暮らしはダメだから、

寮のある学校に通う事って言われて…。」


(この辺りで寮のある高校って…。)


私は少し考えてから、


1つの答えにたどり着き、


思わず太耀君の顔を見た。

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