キミは空に輝く
「あの…さっきは、ありがとう。
よろしくお願いします。」
まだ緊張しているせいか、
かすれ気味の声でお礼を言う。
「全然お礼される事じゃないし!
このクラスはみんないい奴だからさ、
心配しなくても大丈夫だよ。」
太耀君は笑顔で応えてくれた。
(ほんとに、名前通り太陽みたい…。)
そんな事を思いながら、
私は学校初日最大の試練を乗り越えた
解放感に浸った。
― キーンコーン カーンコーン ―
休み時間になると、
私の周りには女子が集まり、
質問タイムが始まった。
「橘さん背高くてキレイだねー!
何センチあるの?」
「168くらいかな。
でも、背高くてもそんなにいい事もないよ。」
――ガチャンッ
背中を向けていた
右隣の席から大きな音が聞こえ、
振り向くと太耀君が筆箱を落として
うつむいていた。
「アハハー太耀ショック受けてる!
160ないオチビには羨ましいよねー。」
「え…。」
そう言われて太耀君を見ると、
確かに私よりもかなり小さく見える。
(全然気づかなかった…。
私、失礼なこと言ったかも…。)
焦る私に気づいたのか、
太耀君は私に笑顔を向けてから、
後ろのクラスメイト達に言い放つ。
「まだチビでも気にしてないし!
家系的に俺は絶対でかくなるはずだし!!」
家系的に…?
「太耀君の家族は、みんな大きいの?」
私は思った事を口に出した。
すると、クラスメイトの由紀ちゃんが
笑いながら教えてくれる。
「太耀のうちはね、両親も2人のお姉ちゃんも
すごい背が高いんだよー!
さらに可哀想なことに…
もう小6の妹にも抜かれそうなのー!!」
周りのみんなも笑いだし、
私は心配になって太耀君の方を見た。
太耀君は顔を真っ赤にして、
一瞬何か言いたそうにしていたが、
チャイムが鳴り先生が教室に入ると、
みんなは一斉に散らばっていった。