イジワル御曹司と花嫁契約
「そんなところ住めないし、居心地悪いし、とにかく無理！　上手く説明できないけど、無理なものは無理！」


「ここよりはよっぽど居心地がいいはずだが。最高級のシーツにキングサイズのベッドもある」


「あのね、想像してみて。例えばジャングルに住んでた動物が、急に人間用のふかふかのベッドで寝ろって言われても寝れるわけないのよ」


「お前はジャングルにいる猿か」


「だから例え話だってば。それくらい私にとっては受け入れられない世界なの」


　彰貴はうーんと唸り、部屋を見渡した。


八畳ほどしかない畳敷きの部屋にはベッドさえない。


座る椅子は、ホームセンターで売っているような数千円の座椅子と、古くなった座布団。


あながち例え話も的を得ているかもしれないと思った彰貴は、大きく鼻で息を吐き唇を真一文字に結んで考え込んだ。


「分かった、俺がここに住もう」


「はあ！？」


　驚きで大きな声が出てしまった。


冗談ではなく、本気で言っているのが伝わってくるから、うろたえてしまう。
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