イジワル御曹司と花嫁契約
母のことが心配すぎて、お店のことまで考えられなくなっていた。


今後のことを考える余裕なんてなくて、一日一日生きていくので精一杯だった。


　だから、店の経営の心配ができるようになったということは、自分に少し余裕が出てきた証拠かもしれない。


　もちろん、母の手術が成功したということもあるし、母の他にもう一つ大きな支えとなってくれる人ができたということも大きい。


　集中して事務処理をきりのいいところで終わらせ、エプロンと三角巾をつけて料理の下ごしらえの準備に取り掛かろうとしているところで、萩原さん夫婦が出社してきた。


時刻は八時半。


私の出社もそのくらいの時間なので、もう着替えて準備に取り掛かっていることに驚いていた。


「あらおはよう、胡桃ちゃん。今日は早いのね」


「おはようございます。なんか目が覚めちゃって」


　笑顔で返事をすると、萩原さん夫婦は互いに目を合わせて、ほっとしたように顔を綻ばせた。


「その様子だと、お母さんの手術は成功したのね」
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