イジワル御曹司と花嫁契約
椅子に座りながら、まるで子供の寝顔を見守る母のような気持ちで、母の寝顔を見つめた。


それは少し胸の奥がむず痒くなるような不思議な感覚だった。


　ちょうど担当医が巡回に来て、モニターに映し出された母の脈拍や鼓動をチェックした。


　嬉しいことに、母の容態はとても安定しているとのことだった。


まだ起きている時間は少なく、起きてもまだ会話する体力はないらしい。


面会時間ぎりぎりまで待ってみたけれど、起きる気配がなかったので、メモ程度の手紙を残して、今日は帰ることにした。


　朝からずっと動いているけれど、不思議と疲労感はなかった。


母の手術が成功した安堵の気持ちも当然あるけれど、心の中で大きな支えとなってくれるものの存在の影響も大きかった。


父が死んで、母と二人で支え合って生きてきて、母に愛され大切に育ててもらってはいたけれど、心の奥底には埋められない空洞があって、漠然とした孤独を抱えていた。
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