イジワル御曹司と花嫁契約
 私が散財するお金なんて彰貴にとっては痛くも痒くもないのだ。


「ということで、そのカードは好きに使え」


「いや、でも……」


「せめて日常品くらいはいいのを買ってもらえると助かる」


 あっと小さく息を飲んだ。


最上級なものに囲まれて育ってきた彰貴が、こんな質素なところで寝起きすることは、とてもストレスがかかり疲れることだろう。


 そうだな、せめてトイレットペーパーはシングル十二個入り一九八円の特売品じゃなくて、三百円か四百円くらいする分厚いものに変更してあげよう。


「分かった。しばらく借りるね。でも不必要なものは買わないから!」


「買ってもいいぞ」


「もう、だからそういうこと言わないでよ! 持ちにくくなる!」


 彰貴の肩を叩くと、力の抜けた自然な笑顔で彼は笑った。


「分かったよ。どう使おうと胡桃の好きにすればいい」


 彰貴の家に住むことを拒んだ私に譲歩して、こんな質素な家で寝てくれるという優しさを忘れちゃいけない。


彰貴が少しでもほっとできる空間にしてあげたい。


私も、少しずつ譲歩していかなくては。
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