イジワル御曹司と花嫁契約
「そっか……」


「納得してくれて嬉しいよ」


 ふと、まじまじと彰貴を見る。


自覚はあまりないのだけれど、親しい人達からよく胡桃は頑固だと言われる。


もしかしたら彰貴も、頑固で可愛げのない私に振り回されて苦労しているのだろうか。


 彰貴の性格上、私に譲歩するなんて考えられないと思っていたけど、実はいつも譲歩していたのは彰貴の方だったのでは? 


現に、こんな古くて狭苦しい部屋に一時とはいえ住むと言ってくれたし……。


「あの……彰貴……あのさ……」


 急に恥ずかしそうに、もじもじとし出した私を訝しげに見つめる。


「なんだ」


 こいつは何を言い出すつもりなんだと身構えているのが傍目から分かる。


 そんな大したことを言うつもりはないのに、なんだか妙に照れくさくて言い出しにくい。


「あの……えと、いつも……色々……ありがとう」


 最後の大事な言葉が尻すぼみになってしまった。


ただありがとうと言うだけなのに、彰貴の目が見られなくて、俯きながら言った。
< 140 / 280 >

この作品をシェア

pagetop