イジワル御曹司と花嫁契約
彰貴は必死に私に合わせようとしてくれているのに。


まったく違う世界で生きてきた二人が一緒にいようと思うなら、互いに合わせる努力をするべきなんじゃないだろうか。


私は、その努力をしようとしていただろうか。


 手に持っていた、彰貴から渡されたブラックカードに視線を下ろす。


これをどう使うか。養われているみたいで嫌悪感がとても強い。


でも、これを彰貴のために使うと思えば嫌悪感はたちまち消える。


 元々彰貴のものなのだから、彰貴のために使うのは当然といえば当然だ。


私はもっと視野を広げていかなければ。


ただ、嫌だ嫌だばっかり言っていないで。


二人がずっと一緒にいるためにはどうしたらいいか。


お互いが居心地良く暮らしていくためにはどうしたらいいか。


 私はもっと大人になる必要がある。


 そう心の中で結論づけた時、玄関のチャイムが鳴った。


八重木さんが来たのだ。


ブラックカードをなくさないようにしっかりと鞄に入れ、玄関へと向かった。
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