イジワル御曹司と花嫁契約
目の前がクラクラしてきた。


とりあえず、そっとトイレットペーパーを棚に戻す。


一二〇〇円もするトイレットペーパーなんて馬鹿らしくて買えるか!


 その後、店内を巡り、値札を見るたび驚愕する私。


フェイスタオルが一万円(最安値)。


枕カバーは一番安いので三万円。


高いのは十万円を超える……。


 アホかーーーー! 


 心の中で叫び、大股で歩きながら店を出た。


もちろん、何も買わぬまま。


 やってられない! 買えるか、こんなもの!


 頭に血が昇りながら、車へと戻り後部座席にどかんと腰を下ろした。


「早かったですね。おや、買ったものは?」


 不思議そうに辺りをキョロキョロする八重木さん。


私は不機嫌なのを隠すことなく答えた。


「買わなかった。買えるか、あんな高いもの」


 ぷりぷりと怒っている様子の私に、八重木さんは残念そうに「そうですか」とだけ言った。


 だんだんと血の気が収まり冷静になってきた。


私が怒ったって仕方ない。


世の中にはこれが高いと思わない人もたくさんいるんだ。


だから商売が成り立っている。


でも、一円でも安く特売品を買おうと毎回躍起になっている自分が惨めに思える。
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