イジワル御曹司と花嫁契約
「どうしましょうか。帰りますか? それとも別のお店に連れて行きましょうか」


 私は一拍分間を置いて言った。


「いい。もう買わない」


「……そうですか」


 明らかに落胆する八重木さん。


私はお店を出る時に決めたことを八重木さんに話した。


「私が……彰貴の家に住む」


 バックミラー越しに見えた八重木さんの顔はとても驚いていた。


驚きすぎて声も出ない様子だった。


「そもそも最初からそうすれば良かったのよ。

変な意地張ってないで、甘えれば良かった。

そしたら忙しい彰貴の負担にならずに済むし、今より一緒にいられる。

カードなんて貰って、それで一から色々なものを揃えるより、あるものを使った方が安く済む。

私はどこでだって寝れるし、どんなものを使おうと構わない。

それにきっと、彰貴の家にあるものは私の家のものよりいいものだろうし」


 一気に捲し立てるように言う私を、八重木さんはポカンとした表情で聞いていた。


一通り聞き終わると、八重木さんはふっと笑みを零した。
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