イジワル御曹司と花嫁契約
「それを聞いたら、彰貴様はとても喜ばれると思います。決して口には出さないと思いますが、胡桃様の家で寝泊まりするのは大変でしょうし」


「どうして口に出さないの? 失礼だと思うような繊細さが彰貴にあるとは思えないけど」


「苦労知らずのお坊ちゃまと思われたくないからでしょうね」


 八重木さんの言葉にハッとした。まさに私が思っていたことだった。


こんな所で寝られないなんて言うものなら、私はずっとここで寝てきたのよ! と腹が立っていたことだろう。


 彰貴には見抜かれていたんだ。


そして、我慢をさせていたんだ……。


 自分がひどく子供に思えた。


彰貴は私が思っていた以上にずっと大人で、私が考えていることなんてお見通しなんだ。


贅沢を怖がる保守的なところがあるから、カードを持たせても浪費するような奴じゃないってことも分かっている。


 俺と一緒にいるなら少しは贅沢に慣れろって意味で、あえてブラックカードを渡したのかな? 


だとしたら、彰貴は私と長く一緒にいられるように考えてくれているのかもしれない。


信頼の証を含めて。


……なんて、それは私の願望か。
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