イジワル御曹司と花嫁契約
「冴木胡桃君だね」


 初老と呼ぶにはまだ早い。


内側にギラギラしたものを秘めている眼差しが、私を捕えていた。


「……はい、そうです」


「乗りたまえ」


 そう一言だけ言い放つと、私から目線を外し、これ以上の会話はここで不要と言わんばかりに、私の返事を待たずして窓ガラスを閉めた。


 運転手が降りてきて、後部座席のドアを開けた。


中には謎の男性が一人で広い車内のソファ席に悠々と座っていた。


内装は彰貴の車よりも大きくて豪華だった。


彰貴の車はソファ席ではなく、飛行機のファーストクラスの座席のような造りだ。


けれどこのリムジンは縦と横にもソファ席があって、縦のソファ席の前にはドリンクが作れるバーカウンターがある。


 こんな車を日常的に使ってるなんて……。


当然のことながら戸惑い、圧倒されていると、「さあ、早く座りたまえ」と謎の男性は言った。
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