イジワル御曹司と花嫁契約
断ろうか、とも思った。


なんならここで大きな声を出して逃げてもいいような状況だ。


 でも、私は素直に従い車に乗り込んだ。


来るべき時が来たのだと思った。


逃げても仕方がない。


私はどこかで、いつかこの日がやって来ることを分かっていたのかもしれない。


 謎の男性は、進行方向を向いている横側のソファ席に座っていたので、私はなるべく距離を置くべく、進行方向が横になる縦側のソファ席に座った。


 目の前には、バーカウンターの上に細長い窓があり、そこから外の景色が綺麗に見える。


横側のソファ席は、左側の細長い窓から外が見え、右側にも通常の大きさの窓があるので、開放的な印象だ。


「何か飲むかね」


 謎の男性が声を掛ける。


豪華に作りに圧倒されている間に、運転手がバーカウンターでグラスに氷を入れていた。
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