イジワル御曹司と花嫁契約
 顎で隣のリムジンを指す。


運転席には運転手もいる。


普段使いでリムジンに乗ってるなんて、本当いけ好かない。


「あのね、乗るわけないでしょ。そんな危険なことするほど馬鹿じゃないの」


「世間に名の知れてる俺が、変なことするわけないだろう」


「世間に名の知れてる?少なくとも私はあんたなんか知らなかったわよ」


 お互いに睨み合うこと数秒。


彼は目を背けて、諦めたように大きなため息を吐いた。


「分かった。お前の好きなところでいい。とりあえず話をさせてくれ」


 急に頼まれて、思わず面食らってしまう。


最初からそういう態度なら、私だって話くらい聞いてやってもいい。


「いいわ、こっちに来て」


 長身の彼を引き連れて、病院の近くにあった公園へと入る。


遊具は少なく、野球やサッカーができるほど広いわけではなく、できてバドミントンやキャッチボールくらいの広さなので、人はほとんどいなかった。


時間的にも子供は帰った後のようで、立ち寄るのは犬の散歩で通る人くらいだ。


 とりあえずベンチに腰掛ける。


すると、彼もためらうことなく隣に腰掛けた。


肩が少し当たるくらい近くに座られたので、腰を浮かせて拳三つ分の距離を取る。
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