イジワル御曹司と花嫁契約
「……それなら勝手にしろ。俺はお前が婚約者のふりをするならどちらでも構わない」


 私がコクリと頷くと、彼は満足そうにニヤリと笑った。


「契約成立、だな」


 契約、という言葉にぞくりと背中に悪寒が走った。


もしかしたら悪魔のような残忍な男と契約してしまったのかもしれないと思うと怖くて堪らないが、もう逃げることはできない。


やるしかない、偽の婚約者を演じるんだ。


「とりあえず、座れ」


「え?あ、うん……」


 私がベンチに腰掛けると、彼は紙袋から四角い箱を取り出した。


箱の中身を空けると、新品を梱包するように白い紙に包まれ保護された母のハイヒールが入っていた。


 ……大事に持っていてくれたんだ。


 彼は無言で跪き、私の左足に触れると、そのままスニーカーを脱がせた。


「え、ちょっと」


 驚いていると、彼は私の足首を掴み、箱から母のハイヒールを取って爪先からゆっくりと私の足にはめた。
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