イジワル御曹司と花嫁契約
大きな声で放たれた一言に驚いて動きが止まる。


 すると私の手が止まったにも関わらず、それが少し不満気な顔で私を見つめる。


「……やめるのかよ」


「だって……やめないとキスするんでしょ?」


「嫌なのか?」


 真剣な眼差しで詰め寄ってくる彰貴に、急にドキドキしてしまう。


「やっ、あっ、嫌っていうか、な、な、なに急に」


 突然変わった雰囲気に圧倒されてしどろもどろになる。


 一気に形勢逆転で、完全に押され気味の私。


 すると、いきなり彰貴がぐっと距離を詰めてきて、唇が軽く重なってすぐに離れた。


 呆然として固まってしまう。


 え、なに、今の。


くすぐるのやめたのにキスされた。


え、なんで?


なんでこのタイミングでキス? 


しかもここ、車の中だし。


運転手さんいるのに!


 顔が真っ赤になって硬直したまま動かない私に、「顔、真っ赤」とさらに私の恥ずかしさを助長する無神経な言葉を投げかけられる。


「……もう、しらない!」


 これ以上真っ赤になった顔を見せるのは私のプライドが許さず、顔を背けた。


 早く顔の火照り治まれ、と思いながら窓の景色を見つめていると、彰貴の手が私の左手を握った。


……え、どうして手を握るの?
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