壊れるほど抱きしめて
先に部屋に入ったのか、私が階段を登った時には坂木くんの姿はなかった。
私は鍵を開けて自分の部屋に入る。
そう言えばメイクもしてなかったな。
休みと言うこともあり、私は洗濯をして掃除をした。
でも昨夜の事が何度も頭に浮かび、坂木くんが気になってしかたない。
まるで坂木くんに恋をしてるかのようだ。
私達は好き合って体を重ねたわけではないし、恋に発展する事もない。
気持を切り替えるために料理をしようと冷蔵庫を開け、食材を取り出してカレーを作り始めた。
昨日、泊めさせてもらったお礼に坂木くんにもカレーを持って行こう。
何が好きとかわからないけど、カレーなら大丈夫かな?食べてくれたら嬉しいな。
そう思いながらカレーを作った。
カレーが出来上がって小さな鍋に入れ、坂木くんに渡すために部屋を出た。
坂木くんの部屋の前に立つと、インターフォンを押した。
少しして扉が開くと、坂木くんが顔を覗かせた。
「あ、あの、昨日は泊めさせてくれたお礼にと思って、カレー作ったから坂木くん食べて」
坂木くんは表情を変えることなく私をじっと見つめたまま何も喋らない。
「さ、坂木くん……?」
「お礼とか別にしなくていい」
「ご、ごめんね」
そんな風に言われると、無理にカレーを渡すわけにはいかない。
少しショックだったけど私は自分の部屋に帰ることにした。
「じゃあ、部屋に戻るね」
そう言って部屋に戻ろうとしたら、坂木くんは言った。
「腹減ったら食べる……」
そう言ってくれて嬉しかった。
「お礼がカレーでごめんね。口に合うかわからないけど」
そう言いながら坂木くんに鍋を渡した。
「じゃあ戻るね」
鍋を渡して私は部屋にも戻った。
それから暫くテレビを見たりして、夕食のカレーを食べ、お風呂に入った。
明日も休みな私は、録画していたテレビを見ようと思い、冷蔵庫から缶ビールを取り出した。
昨日は沢山飲まされて酔ってしまったけど、家にいるから誰にも迷惑はかからないと思い、飲みながらテレビを見た。