壊れるほど抱きしめて
ビールが美味しくてお酒が進む。
お金はないけど、ビールを買っていて良かったと思った。
ちょっと飲み過ぎたのか体が火照ってきた。
ーーーピンポーン
すると家のインターフォンが鳴り、私は玄関に向った。
「はい」
そう言って扉を開けると、坂木くんが立っていた。
「あれ、坂木くん?」
「これ……」
「食べてくれたんだ、ありがとう。そうだ、坂木くんも一緒に飲もうよ」
ビールを飲んだ事により、気分が良くなった私は坂木くんの手を引っ張り家の中に上げた。
「お、おいっ!」
「さあ座って!ビールはまだあるし飲んで!カレーだけじゃお礼にならないもんね」
「……」
坂木くんは黙ったまま、何も言わない。
冷蔵庫から缶ビールを取り出して坂木くんに渡した。
「乾杯!」
私だけがそう言い、ビールをグビグビと喉に流し込む。
坂木くんも黙ったままビールを一口飲んだ。
「坂木くんはさ、何で笑わないの?」
「……関係ないだろ」
「坂木くんは何を抱えてるの?」
「……」
「ねぇ、坂木くっ」
そう言いかけた私の口を塞ぐように坂木くんは突然、キスをしてきた。