壊れるほど抱きしめて
体だけの関係だとしても
目覚めると朝になっていて、いつの間にかベッドに寝ていた。
それに坂木くんの姿がない。
私は彼が居ない事で不安になり、床に散らばった服に急いで着替えると、そのまま自分の部屋を出て坂木くんの部屋の前に行った。
ーーードンドン
インターフォンは鳴らさずに、私は扉を叩いた。
「坂木くん!」
彼の名前を呼んだが返事もないし、扉すら開かない。
私の前から居なくなりそうで、胸が苦しくなり、もう一度扉を叩いて坂木くんの名前を呼んだ。
「あんた、何してんの」
「坂木くん!」
私は坂木くんの姿を見るなり抱きついた。
「お、おいっ!」
「良かった……居なくなったかと思った。目覚めたら居ないんだもん」
「……俺の部屋はあんたの部屋じゃないだろ。居なくて当たり前だ」
「……」
そう言われてしまうとその通りで、だけど坂木くんの姿を見て安心した。
「いい加減、離れてくれないか」
「あ、ごめん」
私は坂木くんから離れた。
「コレ、あんたのも買ってるから」
そう言って私に袋を渡すと、坂木くんは自分の部屋に入って行った。
私は渡された袋の中を見ると、コンビニで買ったのか、パンやおにぎりが何種類か入ってた。
一人で食べるには多すぎだけど、坂木くんは私の為に、何が好きかわからないから色々買ってくれたんだろう。
無愛想だけど優しくて、私はそれだけで胸がいっぱいになる。