壊れるほど抱きしめて



坂木くんとは入社して、会話らしい会話もしてないし、仕事の事で少し話すだけだった。


彼の苦しみを知って、人と接する事も、感情すらも表にださないのは、過去に関係があるんだと。


坂木くんはずっと一人で苦しんでいたんだと思うと、さっき会ったばかりの彼に、会いたくなる。


でも、私達は体を重ねたが、恋人ではない。


それに、私が好きになっただけで、坂木くんは私を好きとかじゃないし、好きにもならない。


彼を好きでも、この想いが叶うことはないんだ……。


だって彼の中には"かおり"さんと言う女性が居るから。


こんなに近くに住んでいて、体を重ねても、坂木くんと私の距離は遠い。


無愛想な彼も、苦しそうな彼も、苦しくなるほど好きなのに。


彼を想うほど、好きな感情が溢れる。


この二日で坂木くんを好きになったのは私だ。


この恋が叶わなくてもいい。
いつか坂木くんが笑ってくれるなら。



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