壊れるほど抱きしめて



それに坂木くんは彼に少し似ているーーー


「由利(ゆり)っ」


そう言って私にキスをしたのは、姉の恋人で、私達の幼馴染でもある相原 聖(あいはらひじり)。


姉を事故で失った聖は、姉に似ている私を姉に重ねてキスをした。


聖は姉を愛していた。


そんな姉をずっと羨ましく思っていた。
聖は姉の一つ年上で、私の二つ年上だ。
小さい頃からよく三人で遊んでいた私達。
小学生の時に私は、聖に恋をしているんだと気づいた。
でも聖が目で追っているのは姉の姿で、また姉も聖の姿を目で追っていた。
私の入る隙間なんて無いのは分かっていたけど、それでも聖の事がずっと、ずっと、好きだった。


そして姉が高校生になった時、二人は付き合いだした。


姉の事も大好きだったし、聖の事は好きだけど、付き合いだした事で聖への想いを胸の奥に閉まった。


そうする事で私は、二人を見ても気にならないようになり、高校生になって、初めて告白されて彼氏もできて、その彼を段々好きになると、聖への想いは完全に消えた。


充実した毎日を送っていたのに、突然の姉の死に私は悲しくて、苦しくて、暫く立ち直れなかった。


でも一番ショックを受けていたのは聖だった。


二人は結婚の約束をしていた。


姉をずっと愛していた聖は、魂が抜けたように笑う事もなく、通っていた大学も辞めてしまい、家からもあまり出ることもなくなり引きこもってしまっていた。


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